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第11日目::ここにきてもてた。

 朝、スヴェルドロフスクに到着し、別れを惜しみつつビボワロフ大佐とマイケル、アレクセイ両君が降りていった。コンパートメントは私一人となり、何か寂しい。発車時刻ぎりぎりになって次に乗ってきたのは子連れのさわやか夫婦だった。「私は日本人の学生で怪しくありません」程度の自己紹介をし、パスポートを見せて安心してもらう。私の経験からはこれが確実に手っ取り早く外国人が信用してもらう一番の手だ。名前はすっかり忘れてしまったのだが旦那さんは普通の勤め人で23歳。初めて権力からの解放。奥さんは一応ヨーロッパだから聞くわけにもいかなかったが娘さんはスベ−トちゃん2歳で、早くもロシア語が私よりうまくなりつつある。当然か。
さわやか一般夫婦。
モスクワまで一緒だ。
   
 スベートちゃんは隣のコンパートメントに乗ってきた同じく家族連れの娘さん(1歳)の所へ一人で遊びに行き(すごい放任主義)、その間しばらく三人でトランプをして遊んでいた。時々戻ってくるスベートちゃんに場札をめちゃくちゃにされながら、教えってもらってロシア式大富豪みたいなゲームやページワンもどきをした後、話の種に持ってきた日本の花札を教えたら、綺麗だと好評だった。プレゼントだと言ってあげたらさらに喜んでいた。実は何枚か足りなくなっていて申し訳ないのだがまあ気づくまい。
 やがて列車はバレジノへ到着。食料を買い込み、4人で持ち寄り式で早めの昼食。車内時間は基本的に感覚的な物で、理屈でどうこうなる物でもなく、腹が減れば、または何となくそういうムードになれば昼食の時間なのだ。私は食パンに肉やらタマネギやらいろいろ乗せて焼いたような出来合の食品を提供し、彼らは蒸かした芋とゆで卵、サラダをおごってくれた。飲み物は先に述べたように車掌さんが紅茶を補充してくれないのでコーヒーをおごった。そこで彼らがなにやら缶を出して、「開けて」というので缶切りで360度全開で開けたら実はそれがコンデンスミルクの缶で、要するに開けすぎで笑われた。
 
 そんなこんなで夕方キーロフ駅に到着。いつの間にかモスクワまで1000kmを切った。あの西日が沈めばいよいよ明朝は終点だ。ところで構内の様子はスヴェルドロフスクをすぎるあたりから急に清掃が行き届き始めて綺麗になる。それより東側ではレールの間にペットボトルやらサランラップと絡み合った”元”生ゴミのような物やら散在してたものだがそれがない。うまく表せないが行き交う人々もやや都会的で、今シベリアからでてきました、という私なんかはコンプレックスを感じる。それ以上に相変わらず周りの視線からの日本人がなんかやってるぜおい、というもっと凶悪なコンプレックスがあるのだが。なお、駅構内に限っての物価はさほど変化はないようだ。14Pでオレンジ+リンゴ味の炭酸飲料1.5l購入。
キーロフ駅。
日本人は勝手に何かやってるぜ。
へへーんだ。
まずは写真だ写真カシャ。
   
 キーロフをでると同室の一家は昼(夕方)寝を始めてしまった。私は本など読みながら時間をつぶしていたが、ページをぺらっとやるとスベータちゃんが起きるので廊下で風景でも眺めることにした。相変わらず土地が広すぎてしょうがないといった感だが、建造物の密度がかなり高くなってきている。ところで廊下の様子だが、壁に付いている折り畳みのいすでロシア語の専門書をずっと読んでいる賢そうな若者と、ただひたすら景色を眺めているいい感じーの”高級おばさん”が常連で、この二人はその後、私が知る限り夜中もほとんど廊下にいた。こんにちわー位は言ったが、何かつれない感じ。車内のムードも何かよそよそしく、シベリアを走っていた頃の人なつっこさが無くなってきている気がする。
沿線の原発とそのすぐそばの民家
この辺の価値観が違う。
   
 やがて日が暮れ、またスベータちゃんが廊下をぱたぱた歩き出した。時々目があって、「べぇー」とか適当にやると、受けたようで、私にもなついてくれるようになった。おそらくロシアで一番親密になった女性がこのスベータちゃんだ。さて夕食。相も変わらぬ列車の揺れで少々元気がなかったので、イルクーツクで買った韓国製のカップメンが余っていたのでそれと粉末のスープですますことにした。同室の一家もインスタントのラーメンのような物だったが、調理の仕方がすごい。まず大きめの椀に乾燥麺をいれ、スープとお湯を注ぐ。待つこと30分以上。好みだろうが、ほとんどのスープを吸いつくしてふよふよのやつを例によってスプーンで食べる。富山のうまいラーメン食べたらどんな顔するかなー。とか思った。そういえば日本食食べたいなー。ほんっっっっとに。ご飯とみそ汁〜。その後はゲロゲロでもなくどっぷり疲れてもおらず、飲みもなく足も伸ばせるという、シベリア鉄道最後の夜にして始めての平和な就寝。でも少しだけ寂しい。
 
ロシア号の運行表でもみる

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